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Islandという劇団にて芝居している今泉直のブログです。
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04.27.03:59

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  • 04/27/03:59

01.31.23:47

猫と少年と自転車と。

今日、住宅街の細い道を歩いていたら、前方から小学生低学年くらいの男の子が自転車に乗って走って来ました。
人通りは無く、ウチと少年だけの路地。
少年はヘルメットにマスク、寒いのでかなり着込んでいる様子。

まぁ特に気にもせず、テクテクテクテク。

そして少年とすれ違う瞬間。

ニャー・・・

まさしく少年から聞こえた声。
超普通に猫の鳴き声。

(え?)

思わず振り返るが、少年は自転車。
気付けば随分と離れてしまっておりました。
ウチもとりあえず進行方向に顔を戻し歩き出す。

さて、ここでウチの中に三択が。


『今の声はなんだったんでしょう?』


1.少年が猫の声を真似て発した。

いやいや、なんでわざわざウチとすれ違う瞬間によ。
あんだけ無人の路地なんだから、明らかにすれ違う時を狙って発したとしか。
となるとその理由が分からん。
え、何。猫の声真似上手いでしょ?褒めて?みたいな。
ないないないない。
次。


2.あの上着の中に実は猫を隠し持っていた。

チクタクチクタク・・・・・・うむ、あっても良い。
そう、それはとある小学生の話。
彼は動物が大好きなとても心優しい少年。
そんな彼の昼休みの日課は、大好きなサッカーでもドッチボールでもない。
いつも給食のパンを半分だけ残し、こっそりと机の中に隠す。
チャイムが鳴れば、それを服の中に忍ばせて、我先にとグランドに駆け出す子供達とは逆方向へと走り出した。
途中、彼に投げかけられるサッカーやバスケのお誘いは魅力的ではあったけれど、それには首を横に振り、そしてようやく辿りついた先は、校舎裏だった。
腹からゴソゴソと、少し温められたパンを取り出せば、紅潮した頬で辺りを見回す。
すると、木の陰から現れたのは、一匹の小さな猫。
その身体も泣き声も、か細く、震えている。
また今日も何も食べていないのだろうと、少年は眉尻を下げて哀しげな顔。
だが、己の手の中のものを思い出せばパッと表情を輝かせ、それを食べやすいように千切って、猫の近くに置いてやった。
もう慣れた光景なのか、その猫は警戒もせずにそれを食べ、目の前にしゃがみこんだ少年に鳴き声を聞かせてやる。
少年は嬉しそうに、猫の暖かい頭を撫でた。
それが彼の、日課。
彼には餌を上げるしか出来ない。
母親が大の猫嫌いなのだ。
だがそれで充分、幸せだった。彼にも、猫にも。

ある日、雨が降った。
とても酷い雨だった。
土砂降りは町に警報を促すほど。

次の日、猫は姿を現さなかった。
無駄になったパンを、彼は、校舎裏にある焼却炉に投げ入れた。
次の日も、また次の日も。
彼の給食のパンを半分食べるのは、あの猫ではなく、燃え盛る炎とゴミの山だった。
それでも校舎裏に通い続けた少年の前に、猫は帰ってきた。
恐らくは雨で逃げ出した猫は、一週間もの間どこかを彷徨い、戻ってきたのだ。
また、やせ細っていた。
それでも少年は、泣きそうなほどに嬉しかった。
そんな事も知らず猫は、差し出したパンに勢いよく食いつく。少年は、散らばってしまったパンくずを拾って、鼻先に当ててやった。
途端、驚いた猫は少年の手を引っ掻き、逃げ出す。
木の陰に隠れ、警戒しているようだった。
雨がよっぽど怖かったのか、それともここに来なかった間に他の人間に苛められたのか。
少年が居ては落としたこのパンくずを食べられない。
彼は仕方なく、そこを立ち去る、振りをした。
校舎の影から、辺りを伺いながらパンを食べる猫を見守った。
猫は小さい。あの猫は弱っている。
他の野良猫に盗られてしまうかもしれない事を懸念したのだった。
とにかく、また日課は再開したのだ。
猫の警戒がようやく再び解けてきた頃、いつものように校舎裏に行けば、あの猫が、少年の匂いに気付いてやってくる。その口には何かの虫が咥えられていた。
ようやく咥えられるほどのサイズのそれは、蝶々のようだった。
そして少年の足元にそれをポトリと置いた。
先日の詫びだとでも言いたいのだろうか。虫を食べる癖はない少年は、困ったように、だが、満面の笑みを浮かべる。
猫も何処か誇らしげで、嬉しそうだった。

ある日、天気予報が言った。
明日は土砂降りになるだろうと。

また、居なくなるかもしれない。
そんなのは、嫌だ。
絶対に、嫌だ。

少年は走り出した。
寒空の下、自転車を勢いよく漕ぎ出す。
学校に着けば、息を切らせながら校舎裏へ。
昼にしか居ないかもしれないあの猫を探す。
猫は、少年の声と匂いに反応して、やってきた。
それが、また少年には酷く愛しかった。
猫を抱え、服の中に入れる。
少し狭い。苦しいのか、猫は妙な声を出すが、引っ掻きはしなかった。
心の中で猫に小さく謝りながら、とても暖かく、そして出っ張った腹を抱え、再び自転車に飛び乗った。
少年はまた、走り出す。
母は卒倒してしまうかもしれない。
それでも、それでも少年は足を止めない。

初めての反抗と冒険。
守りたいと思った。
少年は、大人へと一歩、踏み出したのだ。


・・・で、その瞬間にちょうど立ち会っちゃったウチ、みたいな。
はい、次。


3.少年に見えたけど、実は猫。

・・・うん、自転車乗れねぇ。


以上、三択。
2が異様に長い。
あ、4つ目ある。

4.ウチの聞き間違い。

・・・一番あって欲しくない。


はい、そんな4択をつらつらと考えながら、気付いたら駅に着いてました。
そんな日常。


 

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